最近のトラックバック

« すぐ感情が沸騰するわたしです | トップページ | 藤田若雄さんのこと 「平和は無いか。何処にも無いか。否ある。俺の中に小さくともってゐる。之はイエス・キリストによって点火された信仰による平和の灯だ。そして之が平和の礎だ。」 »

 「罪もないのに、突然、鞭打たれ、殺される者の絶望を神は・・・」 大西巷一さん作『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』第2巻発売

以前紹介した大西巷一さん作『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』の第2巻が昨日発売された。本当は昨日ぜひとも手に入れたかったのだが、仕事で疲労しきっていたため書店に寄らずそのまま帰宅、果たせなかった。

ひとりのプロテスタント信徒による感想である。そのことをあらかじめお伝えする。漫画作品の感想だけでなく、この素晴らしい作品を踏まえての自分の信教と思想の内容を告白する形になるので、どうかご諒解いただきたい。あるいは作者の大西さんにとっても「自分の考えとは違う」という点もあると思う。しかし、一旦読者に発表した以上は作品は個々の読者に委ねられるというのがわたしの考えである。この点もどうかご諒解いただければと願う。

以下、内容への言及があるので、未読でこれから読むのを楽しみにされている方はご注意願う。


主人公シャールカの友、ターニャが死んだ。戦友たちが自陣の壊滅に瀕し、陣に自ら火を放って最後まで敵に抗い教えに殉じようとする中で、炎に身を焼かれての凄惨な死である。ターニャは「莞爾、従容として死に就き」はしない。ひとりの貧しい農民の少女として、圧制に苦しめられ続けた果てに死んでいく。

「あつい・・・!あついいいいいっ!おど・・・ちゃ・・・あづ・・・・」
ターニャの最期の言葉である。

旧約聖書のヨブ記。人間の、人生の不条理を神に向けて義人ヨブが絶叫する、聖書の中でもとりわけ強烈な力で迫ってくる箇所に次のような言葉がある。

「罪もないのに、突然、鞭打たれ
   殺される人の絶望を神は嘲笑う。」(ヨブ記9章23節)

このヨブ自身のすさまじい絶望、泣きつ叫びつ死に物狂いで訴える声を、信徒であっても、否、信徒だからこそわがものとして良いのだと思う。ヨブ記では主なる神はヨブにこの叫びへの直接の回答はなさらない。

この叫びはヨブだけのものではなかった。イエス・キリストは御自身が十字架上で絶命する直前こう叫ばれる。

「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」(マタイ福音書27章46節)

「神さま、なぜですか・・・・」
あるカトリック信徒の方は、東日本大震災の被災者として「『なぜ』とは問わない」、あるがままに主の御意志として受け容れる、と言われた。しかしわたしは、基督者であっても、あるいは基督教を受け入れられない方であっても、神さまには思いのままに「なぜですか」と泣きつ叫びつ訴えて良いと思う。絶望はそれが自らの衷から発するものであれば、他者に対してもたらすものではなく自らのものとしての絶望であれば、そこから救いへ至るものだというのがわたしの考えである。

主なる神はいつかはすべてに回答を与えてくださるとわたしは信じている。
「主よあわれみたまえ、キリストよあわれみたまえ」を祈る一人として。

ターニャの死は、ただ単に『乙女戦争』という歴史を題材にした漫画の、架空の登場人物の死という以上のものを訴えていると思うのはわたしの贔屓目ではないだろう。戦争は今でも世界中で続いている。平和をもたらす方策は人それぞれ考えがあるだろうが、主イエス・キリストによっても、ナザレのイエス以前にも(たとえば老子)人が剣を取ること、剣で人を殺そうとすることの非は訴えられてきた。その普遍性(わたしは正義、善悪などすべては相対的なものでしかないという考えには立たない)を忘れないようにしたい。

そして同時に、前回の感想でも述べたが、剣を取ること、他者の命を奪うことでしか自らの信ずるもの、愛するものを守れなかった人々の辛さ、悲しさ、苦しさを思う。


付記
かつてのわたしがそうだったように「宗教戦争・・・これだから欧州、中近東の一神教は・・・。それに比べてわが日本は本当に寛容だ」という謬論(敢えてこう言う)に流されないよう努めたい。我が国が「寛容」めいて見えるのは、深刻な異文化、異民族間の衝突が地理的要因のために無かったからに過ぎない、というのがわたしの見解である。

« すぐ感情が沸騰するわたしです | トップページ | 藤田若雄さんのこと 「平和は無いか。何処にも無いか。否ある。俺の中に小さくともってゐる。之はイエス・キリストによって点火された信仰による平和の灯だ。そして之が平和の礎だ。」 »

歴史・宗教」カテゴリの記事

コメント

『乙女戦争』作者の大西巷一さんご本人がわたしの投稿をトラックバックしてくださいました!大西さんのブログにこの記事の紹介があります。

本当にありがとうございます。

これからも読者のひとりとして真剣にこの作品に向き合っていきたいです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

» 『乙女戦争』2巻発売されました! [巷にひとり在り]
もたもたしてる間に10日以上経ってしまいましたが(汗)、5/10に『乙女戦争(ディーヴチー・ヴァールカ)』2巻が発売されました〜乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ(2) (アクションコ ... [続きを読む]

« すぐ感情が沸騰するわたしです | トップページ | 藤田若雄さんのこと 「平和は無いか。何処にも無いか。否ある。俺の中に小さくともってゐる。之はイエス・キリストによって点火された信仰による平和の灯だ。そして之が平和の礎だ。」 »

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ