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矢内原忠雄『卒業生を送る』 再掲

わが愛する幾人かの若き友が学校を卒業して社会に出でる。
神の恩恵によりて君たちに今日あるを得たことを、私は君たちと共に喜び、
神に感謝する。

君たちを今の時勢に於いて世に送るは、特別小羊を狼の中に入れるやうなものだ。
併し心配することはない。君たちが信仰に立つ限り、
神は君たちの盾となり、力となつて下さる。

小賢しく立ち廻るな。率直に歩め。

基督者風を吹かすな。併し与へられた最初の機会に於いて、自分が
基督者たる立場を明白にせよ。その時君たちは忽ち世の憎悪と冷笑とを
受けるであらうが、それで君たちはイエスの弟子となるのである。
その時態度を曖昧にするな。最初の戦に勝つてその地点に信仰の旗を立てて置けば、
後の戦は戦ひ易いのである。

勤勉なれ。誠実なれ。義務を果せ。恩を忘れるな。
基督者などと言ふ者の中に、之ら人間としての基本的なる徳に欠くる者が
少なくないから、余は特に君たちに注意して置く。

聖書を学ぶことを怠るな。共に聖書を読む友を見つけよ。若し居なければ、作れ。
二人でも三人でも、共に集つて聖書を読め。なるべく新しく読み始める人を得よ。
そして君たちが指導者となれ。聖書は積極的に学ばなければならない。

急ぐな。失敗しても悲しむな。失敗は誰にでもある。失敗によつて神を知ることが出来れば、
失敗も幸福なのだ。人生を長く、大きく、来世まで見透して考へよ。

神を愛せよ。隣人を愛せよ。少しでも周囲の人々を助けよ。殊に弱き者を助けよ。
君たちの生涯をして、弱き者には喜ばれ、傲る者には憎まれるものたらしめよ。
君たち互に愛せよ。愛だけが永遠に残るのである。
さらば往け、元気で、主の平安の中に。
1941年(昭和16年)3月

付記
今から73年前の言葉です。
ここを見てくださった若い方々に、とくにこの春卒業という節目を迎える方に贈ります。
先人への深い畏敬とともに。

私は嘗て大学で卒業論文の準備をしていた時にこの言葉に接しました。
より深刻かつ痛切な送辞が1942年(昭和17年)、同じく矢内原によって語られています。

大学図書館の片隅でこの言葉に接した時、実を言えば
涙を抑えることが出来なかったのです。
これを語る矢内原自身がどんなに苦しかっただろうか、と。
(閲覧室には衝立があったので涙を見られることはなかったと思いますが。)
深刻な、余りにも深刻な時代に、ありったけの真情を以て
矢内原は若い人々に語りかけました。

矢内原の著作の大多数が絶版となっている今の時代、
おそらくこういう形でご紹介しないと、この矢内原の言葉が
ここをご覧の皆さんに伝わることはないでしょう。
100人中1人でもいい、何か感じる所を得てくだされば幸いです。


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コメント

こんにちは。

矢内原忠雄氏の言葉、心に沁みます。
1941年というと、教授だった時の言葉ですね。

「神を愛せよ。隣人を愛せよ。少しでも周囲の人々を助けよ。殊に弱き者を助けよ。
君たちの生涯をして、弱き者には喜ばれ、傲る者には憎まれるものたらしめよ。」

このような言葉を贈ることのできるのは、神を真に畏れる者ですよね。日本にはそのような指導者が少ないと嘆く前に、自分自身が真に神を畏れる者でありたいです。

「急ぐな。失敗しても悲しむな。失敗は誰にでもある。失敗によつて神を知ることが出来れば、
失敗も幸福なのだ。人生を長く、大きく、来世まで見透して考へよ。」

子どもに伝えたいです。日本の社会を見ていると、一度失敗すれば、もうダメだとの風潮があるように感じますが、そうでは決してない。失敗を通して神をより深く知る、そう子どもができるようにと祈っていきます。

矢内原氏のこと、これからも色々と教えてください。

こんばんは。

愛希穂さんの御次男が卒業されたのですね。愛希穂さんのブログではまだお祝いの言葉を申し上げておりませんでした。

おめでとうございます。

矢内原先生がこの言葉を述べたのは1941年ですが、既にその4年前の1937年冬に中国侵略への憤激の余り「この国を葬ってください」と叫んだ「神の国」講演を口実として、東京帝国大学経済学部教授の職を逐われています。当時の聖書講義誌『通信』に一旦は講演速記を載せるのを本人がためらいましたが、一夜明けて覚悟の末「やはり載せよう」と印刷したものが東大当局の手に渡った結果とのことです。1941年当時の矢内原さんは岩波新書の『余の尊敬する人物』の印税や過去の貯蓄に頼りつつ自宅で聖書や古典の講義に専念されていました。

「神を愛せよ。隣人を愛せよ。少しでも周囲の人々を助けよ。殊に弱き者を助けよ。
君たちの生涯をして、弱き者には喜ばれ、傲る者には憎まれるものたらしめよ。」

わたし自身、本当に罪深い、欠けだらけの人間です。もし主なる神の御存在を知ることなく、且つ今をときめく世襲政治家たちのように豊かな環境の中で生まれ育っていれば、安倍首相真っ青の「傲る者」に成り果てて平然と「弱き者」を踏みにじっていたことでしょう。

今は残念ながら知られることの少なくなった矢内原忠雄という、神さまの使信を全身全霊で語り続けた人の存在を少しでも皆さんに知っていただければと思います。

これからも宜しくお願い致します。

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