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国立国会図書館関西館へ 平野小剣のことを尋ねて

最近はようやく涼しさを肌で感じられるようになり、ようやく長かった夏が終わり
秋になってきたなあと思えます。そんな休日の今日、枚方市立中央図書館と
京都府南部の精華町にある国立国会図書館関西館を「はしご」してきました。

枚方の図書館では日中戦争関係のものを中心に。
世には数多の戦記や軍人たちの伝記がありますが、最近思うのは
太平洋戦争期に重点を置いている為、「日中戦争中、この人は何をしていたのだろう?」
と思わせる伝記や戦記が多いということです。

紛れも無い名作である阿川弘之さんの海軍提督三部作、
『山本五十六』『米内光政』『井上成美』でも、三者が中国との戦争をどのように考え、
軍人として、軍部の高官としてどんな判断を、行動をしたのか、という点で不十分なのです。
残念ながら『井上成美』では以前にも触れた重慶空襲についての言及は無かったと記憶しています。
歴史書では井上が重慶空襲を「日本海海戦以来の大戦果」と発表したと伝えています。
これも前に述べたことですが、聡明そのものの井上ならば
自分たちの作戦によって重慶で何が起きるか、起きたかは十二分に知悉していたことでしょう。

京阪電車と近鉄電車を乗り継ぎ、更に奈良交通のバスで
国立国会図書館関西館に赴いたのは、これまた以前触れた平野小剣の生の文章に
触れたかったからです。わが尊敬する矢内原忠雄を罵倒したという
平野らの文章に実際に接して考えてみたかったのです。
軍国主義者、超国家主義者であっても、生涯部落差別と苦闘し続け
あの水平社宣言の起草者の一人でもあった平野という人間には
真剣にその著作に取り組んでみる価値はあると思ったのです。
大阪府立中央図書館で平野らが参加していた『原理日本』の
復刻版を書庫から出してもらったことがあるのですが
(全巻揃ってなんと23万円だったと記憶しています。館外貸出禁止でした。)
府立中央図書館が月曜日は休みなので、精華町まで足を伸ばすことにしました。

機能美のみごとな国会図書館で平野の著書を探したのですが
いくつかはその貴重さの故か「利用禁止」でした。
『原理日本 平野小剣』で検索し、平野が直接矢内原を攻撃した著作を
探そうとしたのですが、もう夕方で時間が無く断念。
戦後自らの命を絶ち、矢内原がひそかに「彼は私を真剣に攻撃したから」と
その冥福を祈ったという蓑田胸喜による矢内原非難の巻はあるのですが。

読むことが出来たのが、かねてから触れたかった朝治武『差別と反逆 平野小剣の生涯』(筑摩書房)でした。
一部分しか読めなかったのですが、平野の受けた苛酷も苛酷な差別、
それによって平野がいかに傷付き、心を荒ませ、そして差別と闘う志を持つに至ったかが
平野本人の言葉を引用して伝えられています。
読んでいて涙を禁じ得ませんでした。

確かに平野は「義に飢え渇く人」でした。
そして私のなまじいの感傷など毅然としてはねつけるであろう
「エタであることを誇り得る」(水平社宣言)誇り高い人でした。
そんな人が、なぜ同じく他者を虐げる侵略戦争に賛同し
積極的に加担していくようになったのか、それをもっともっと突き詰められればと思います。

バスの中で一つの幻を思い描きました。
同じく「義に飢え渇く人」であった矢内原と平野が、天で手を握り合い和解する幻です。
基督者の端くれである私にとって、それは現実に有り得る希望としての幻です。

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