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『大唐皇帝陵』展 唐朝の歴史を思う

幸いカレンダー通りの休みが取れた為、今日は
奈良県の橿原考古学研究所附属博物館の「大唐皇帝陵展」
http://www.kashikoken.jp/museum/tenrankai/tenrankai-kiji/2010/10spring/index.html
を観に行ってきました。

近鉄の畝傍御陵前駅から歩いて5分の所にある博物館で
まず章懐太子(李賢。高宗皇帝と則天武后の皇子。母により自害を強いられる)墓と
大明宮(壮大な正殿の含元殿で有名)のコンピュータグラフィック画像を見た後、
展示会場へ。大明宮の有様はまさに「皇威」を感じさせるものでした。

歴代皇帝の陵の写真と事績の簡単な説明パネルを眺めた後、
唐三彩ほかの出土品を観ました。今回の展示品は、玄宗皇帝の兄・李成器
(譲皇帝と諡される。人格温厚なことで知られ、弟帝との仲は終生良かった。
祖母の則天武后により兄弟もろとも幽閉されたこともある)の陵と
衰亡期の僖宗皇帝の陵からの出土品が中心だということでしたが
僖宗皇帝陵からのものが壁画くらいしかなかったのは残念でした。

史書で幾度も読んだ唐の歴代皇帝に思いを馳せつつ、会場を観て回りました。
一番珍しかったのは、跪いた儒臣の石像でしょうか。
まさに平伏して何事かを上奏しています。
唐代、宰相は皇帝と座り合って上奏が出来た、という話を読んだことがありますが
それも高位の宰相、気心の知れた一部の者だけに
許された特権だったのかもしれません。

僖宗皇帝については黄巣の乱で国が破綻したことが知られていますが
それを反映して、帝陵も極めて粗末なつくりだったということです。

皇帝は賊軍が長安に侵攻した際、
多くの皇族、廷臣、宮女たちを置き去りにして蒙塵します。
賊軍に捕らわれた皇族たちは悉く惨殺されました。
凄惨な内戦の末に(民衆の大虐殺とそれに伴う人肉食も発生した)
乱が一応平定されて長安に還幸した皇帝は、
置き去りにした宮女たちが賊に凌辱されたことを知ります。
「生き恥を晒しおって」と思ったのか、宮女たちを御前に引き出して
賊に身を任せてしまったことを
詰問すると、一人の宮女が答えたそうです。
「陛下は百万の大軍を擁しながら宗廟を棄てていかれました」と。
そして国家の大事を誤り、乱を招いた廷臣たちを糾弾したそうです。
皇帝は沈黙するほかありませんでした。

しかし宮女たちは、賊に身を任せたことを赦されず、悉く市で斬られることに。
民衆は引き回される彼女達に酒を進めました。せめて恐怖を忘れるようにと。
皇帝に毅然と答えた宮女だけは酒を拒み、死の瞬間まで神色自若としていたそうです。

私の想像ですが、この宮女は単に皇帝を怨んでいたのではなく
元々は尊敬していたのではないかと思います。そして嘗てはそれ以上の想いを
抱いていたのではないかとも。何より、彼女こそ賊を心から憎んでいたでしょう。
だからこそ皇帝の詰問に毅然と応じ
「暴力で凌辱された自分には何のやましい所もない」と
毅然として死に臨んだのかもしれません。

中国に限ったことではありませんが、大乱のたびに婦女は徹底して凌辱され、
物として扱われるのが常でした。中国歴代正史の「列女伝」には、凌辱されるのを
命を賭して拒み、そして惨殺された女性たちの伝記が何百も連ねられています。
彼女達は貞女の鑑として永くその霊が弔われました。
しかし、暴力に抗しきれなかった人々は?
『ローマ帝国衰亡史』の初回感想でも触れたことですが、この種のことは
歴史を学ぶたびに暗い思いを私にもたらします。

唐の歴代皇帝陵は、簒奪者朱全忠に仕えた
節度使によって徹底的に暴かれたそうです。
太宗皇帝が、永遠に手元にと願った王羲之の真筆も奪われました。

人間の為すことに永遠はない、ただ「上帝」=神のみが永遠なのだと
基督者の私は思わされました。

パスカルと同じ言葉を使えば、私は基督者であることを
「一種の賭け」だと思っています。
歴史上、生きている間は苦しみの連続で死んでいった人々、その人たちの苦しみを
顧みて別の世界で癒して下さる御方がいてもいいのではないか、との願いです。
それは、その人々が終生基督教と無縁であっても変わらないと信じています。

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