最近のトラックバック

« 自分―享安山人―に欠けているもの やはり克己心に尽きる そして皇室の御事についての読書感想 | トップページ | 小田菜摘『そして花嫁は恋を知る 紅の沙漠をわたる姫』(集英社コバルト文庫) »

教会の勉強会で隅谷三喜男『近代日本の形成とキリスト教』(新教出版社)に学ぶ 続・皇室の御事について

今日は教会で日本プロテスタント史について学ぶ月1回の勉強会が開かれました。参加者は牧師夫妻と知友と私の4名。これまでは現代プロテスタント神学者のカール・バルトについて学んでいたのですが、一段落したこともあり今回から教材を新たにしました。

隅谷三喜男『近代日本の形成とキリスト教』(新教出版社)は社会思想史学者として知られた隅谷が1950年に刊行したものです。幕末から明治前期までの日本プロテスタント史について、社会状況の分析を踏まえつつ論じたもので、明治に形成された近代天皇制を「絶対王政」とするのは古い分析でしょうし、或いは階級史観にとらわれすぎではないかとの思いもありますが、明治前期のプロテスタント史が的確に纏められている著書と言えるでしょう。

今日は私の属する日本キリスト教会の源流である日本基督公会の創立までを学びました。最初の公会の入会者には浄土真宗の僧侶2人が「基督教の内情偵察」の為に入ってきたことなどを初めて知り、あらためて日本にあった「耶蘇」への忌避感を思い知らされた次第です。

忌避感といえば、プロテスタント信徒である著者は124頁で井上哲次郎(『一高不敬事件』での内村鑑三の宿敵とも言える国家主義者で、内村は彼へのわだかまりを何十年も棄て切れなかったようです)と植村正久らの論戦を取り上げて次のように記しています。

「この間にキリスト教徒は皇室に対して不敬を敢てする乱臣賊子であり、キリスト教は日本の国体と相容れない、という見解が次第に国民の間に滲透するようになったのである。・・・キリスト教が天皇制と相容れないという主張自体は、肯綮に当っていたのである。」

熱心な皇室への尊敬の念を抱く私としては、上記の隅谷の見解に対しどう向き合うか、との切実な問題が生じてきます。これは私が学生時代にキリスト教を受け容れて以来、長年に亘って考え続けていることです。

私は、こう答えます。「基督教徒は陛下を現人神とは看做さないし、また看做してもならない。主なる神の御許、御前では陛下も私も同じく一個の人間、罪人である。しかし、この世では秩序を保つべく各人にそれぞれの役割が与えられている。陛下は日本国の象徴として、私は一介の平民として。その差を以前述べたように共和主義への幻想を抱かない私は積極的に受け容れる」と。

言うまでも無く大日本帝国では天皇を自分と同じ人間、罪人と考えることは大罪でした。上記の見解を述べれば、私は官憲によって投獄、拷問されたことは間違いありません。その意味ではキリスト教と戦前の神権天皇制とは相容れません。しかし、それは日本の歴史と伝統を体現する象徴的君主としての天皇の意義までを否定するものだとは思えないのです。嘗て、多くのローマ皇帝が基督教徒に凄惨な弾圧を加えました。賢帝として知られるマルクス・アウレリウス帝は実は基督教徒には極めて冷酷な統治者でした。(私は殺害した基督教徒の数でいえば、マルクス・アウレリウス帝は暴君ネロより酷かったのではないかと想像しています)しかし、基督教徒は苛酷な迫害が終わること、暴君たちが神の裁きを受けることは望んでも、帝政を革命で打倒しようとはしませんでした。寧ろ敵の為に祈りを主に捧げたのです。そして300年後、基督教は帝国によって公認されました。

私の受洗した札幌北一条教会の小野村林蔵牧師は戦時中、「天照大神と世界を御創りになった神様とは違いますね」と言ったために投獄されました。しかし小野村牧師が昭和天皇や皇室を敵視したなどとは聞いたことがありません。ましてや現在は象徴天皇制となり、国民に信教の自由、内面の思想の自由が認められているのです。今上陛下が現在の平和と自由とをこよなく重視しておられることは多くの識者も記す所です。日々孜々として象徴としての務めを果しておられる陛下やその支えとなっている皇族方を敵視し、共和制を志向する必要は全くないと私は考えます。

« 自分―享安山人―に欠けているもの やはり克己心に尽きる そして皇室の御事についての読書感想 | トップページ | 小田菜摘『そして花嫁は恋を知る 紅の沙漠をわたる姫』(集英社コバルト文庫) »

歴史・宗教」カテゴリの記事

コメント

下記の「隅谷三喜男研究会」のホームページにLINKを張らせていただきました。

http://mikiosumiya.jimdo.com/

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 自分―享安山人―に欠けているもの やはり克己心に尽きる そして皇室の御事についての読書感想 | トップページ | 小田菜摘『そして花嫁は恋を知る 紅の沙漠をわたる姫』(集英社コバルト文庫) »

2020年7月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ